ベースアップ評価料は給与明細にどう反映すべき?正しい手当の記載方法と届出・管理の注意点を徹底解説【2026年改定対応】 / エムスリーデジカル株式会社

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ベースアップ評価料は給与明細にどう反映すべき?正しい手当の記載方法と届出・管理の注意点を徹底解説【2026年改定対応】

2026年07月15日

2024年から導入されたベースアップ評価料は、算定した収益をスタッフの給与明細に正しく反映しなければ、要件違反となりペナルティのリスクがあります。本記事では、給与明細への手当の記載方法・対象職種・証明書類の保管方法から、2026年診療報酬改定での変更点、よくある失敗パターンと回避策まで、クリニック経営者・事務長が今すぐ実践できる情報を網羅的に解説します。

目次

ベースアップ評価料とは? 制度の概要と給与明細への関係性

制度が生まれた背景:医療従事者の賃金格差問題

2024年6月の診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」は、医療機関に勤務する幅広い職種のスタッフの賃金を継続的に引き上げることを目的とした加算点数です。

日本全体で進む物価高・賃金上昇の流れの中で、医療業界のスタッフ給与は他業種と比較して上昇が遅れており、看護師や医療事務スタッフの離職・人材不足が深刻化していました。こうした状況を改善するため、診療報酬という仕組みを通じて財源を確保し、医療機関が賃上げをしやすくする制度として創設されました。

給与明細との切っても切れない関係

ベースアップ評価料の最大の特徴は、「算定した収益を必ずスタッフの賃金改善に充てなければならない」という条件がついている点です。つまり、点数を算定するだけでは要件を満たさず、その収益が実際にスタッフの給与明細に反映されていることを示す書類が求められます。

給与明細は、この「賃金改善の実績」を証明するうえで最も重要な証拠書類の一つとなります。記載方法を誤ったり、改善額の記録が不十分だったりすると、後の実績報告や個別指導の際に問題になるリスクがあります。

↓ベースアップ評価料の概要・種類・点数・届出を詳しく確認したい方はこちら

資料閲覧はこちら:2026年診療報酬改定で話題 ベースアップ評価料とは? -概要・種類・点数・届出について解説-

給与明細に反映すべき「賃金改善」の基本ルール

「賃金改善」とは何を指すのか

ベースアップ評価料の要件における「賃金改善」とは、前年度(または改定前)と比較して、スタッフの基本給または定期的に支払われる手当を引き上げることを指します。

単なる一時金(賞与・特別手当)のみでは「ベースアップ」とは認められない点に注意が必要です。制度の趣旨が「持続的な賃上げ」にあるため、毎月の給与明細に継続して反映される形での改善が求められます。

具体的に認められる賃金改善の例は以下のとおりです。

- 基本給の引き上げ
- 固定的な手当(職務手当、業務手当など)の新設・増額
- 通勤手当や住宅手当など毎月支給される手当の増額

一方で、以下のものは単独では賃金改善として認められません。

- 年2回支給の賞与(ボーナス)のみの増額
- 単発の特別一時金
- 社会保険料の事業主負担分の変化

引き上げ率の目安:何%アップが必要か

ベースアップ評価料の算定にあたっては、所定の賃金改善率を達成することが要件とされています。2026年改定では、職種に応じた引き上げ目標率が新たに設定されており、事務職員等については前年比5.7%以上、その他の対象職員(看護職員・40歳未満の若手医師等)については3.2%以上の賃上げが求められています。

引き上げ率の計算式は以下のように考えます。

- 賃金改善額(月額)÷ 改善前の賃金総額 × 100 = 改善率(%)

この計算をスタッフ全体で行い、要件を満たしているかを確認したうえで届出をする必要があります。

給与明細への具体的な記載方法:手当の種類と注意点

どの名目の手当として記載するか

賃金改善をどのような名目で給与明細に記載するかは、クリニックの就業規則・賃金規程に基づいて決定します。よく使われる方法は以下の3パターンです。

- 基本給に組み込む方法:最もシンプルで、「ベースアップ」の趣旨に合致します。ただし、一度上げると下げることが難しいため、経営への影響を慎重に検討する必要があります。
- 「ベースアップ手当」などの独立した手当として新設する方法:金額が明示されるため、「ベースアップ評価料を原資とした賃上げ」であることがスタッフにも伝わりやすいです。また、実績報告の際に改善額の確認が容易になります。
- 既存の職務手当・業務手当の増額として記載する方法:新たな項目を設けずに既存の賃金体系に組み込む方法で、就業規則の改定コストを抑えられます。

どの方法を選ぶ場合でも、就業規則・賃金規程への反映と、スタッフへの説明・周知が欠かせません。書面による同意または説明の記録を残しておくことを強く推奨します。

社会保険料・所得税への影響も把握しておく

賃金改善を行うと、それに連動して以下の費用も変化します。クリニック側の経営計算に必ず組み込んでください。

- 健康保険料・厚生年金保険料:報酬月額が上がると、標準報酬月額の等級が上がり、保険料も増加します。
- 雇用保険料:賃金総額に対して一定率が掛かるため、賃上げにより増加します。
- 所得税(源泉徴収):給与が上がることで源泉徴収額が変わります。スタッフへの手取り額の変化も含めて丁寧に説明することが、信頼関係の構築につながります。

ベースアップ評価料として得られる収益額と、実際に必要な賃上げ原資(社会保険料事業主負担増を含む)を事前に試算しておくことが、経営安定化のための重要なステップです。

対象スタッフの範囲と「常勤換算」の考え方

賃金改善の対象となる職種

2026年改定後のベースアップ評価料による賃金改善の対象は、院長(管理者)および40歳以上の医師・歯科医師を除くスタッフです。2026年改定では、従来は対象外だった40歳未満の勤務医・歯科医師が新たに対象職種へ追加されました。具体的には以下が含まれます。

- 40歳未満の勤務医・歯科医師
- 看護師・准看護師・看護補助者
- 薬剤師(調剤薬局は別制度)
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリスタッフ
- 診療放射線技師・臨床検査技師
- 社会福祉士・精神保健福祉士
- 医療事務・受付スタッフ
- 管理栄養士・栄養士
- その他医療機関に従事する職員

医療事務・受付スタッフも対象となっている点、および2026年改定で40歳未満の若手医師も新たに対象に加わった点は、クリニック経営者が見落としがちなポイントです。「賃金改善をしたつもりが、対象職種の一部を漏らしていた」というケースは実際に発生しています。

なお、引き続き対象外となる職種は、院長(管理者)40歳以上の医師・歯科医師専ら事務作業のみを行う役員(理事など)です。

パート・非常勤スタッフの扱い

非常勤・パートタイムスタッフも賃金改善の対象です。常勤換算で人数を計算する場合は以下の方法が一般的です。

- 常勤換算数 = 非常勤職員の週所定労働時間の合計 ÷ 常勤職員の週所定労働時間

例:週40時間が常勤の場合、週20時間勤務のパートスタッフは0.5人として換算します。届出に必要な常勤換算数をどのように計算したか、その根拠も記録として保管しておきましょう。

算定開始までのステップ

ベースアップ評価料を算定するには、事前に地方厚生局への届出が必要です。算定開始までの基本的な流れは以下のとおりです。

1. 賃金改善計画書の作成:対象職員数、改善前の賃金総額、改善後の見込み額、改善率を記載します。
2. 就業規則・賃金規程の改定:賃金改善の内容を規程に反映させ、スタッフへ周知します。
3. 地方厚生局への届出:必要書類を揃えて提出します。届出は月の初日から起算するため、月の途中で届出をしても当月からの算定はできません。
4. 算定開始・レセプト記載:届出が受理された翌月初日から算定を開始します。レセコンへの設定変更も忘れずに行いましょう。
5. 実績報告:所定の時期(報告期限については地方厚生局の最新案内を確認してください)に前年度の賃金改善実績を報告する義務があります。

2026年診療報酬改定で変わったポイント

2026年改定における主な変更点

2026年6月の診療報酬改定では、ベースアップ評価料についていくつかの見直しが行われました。主なポイントを整理します。

- 点数の見直し:外来・在宅ベースアップ評価料Ⅰ・Ⅱの点数が改定されました。改定前と比べて算定収益が変わるため、賃金改善計画の再計算が必要です。
- 対象職種の拡大:従来は対象外だった40歳未満の勤務医・歯科医師が新たに対象職種に追加されました。若手医師を雇用しているクリニックは、ベースアップ評価料の原資を彼らの基本給引き上げに充てることが可能になっています。
- 実績報告の様式変更:提出書類の様式が更新されている場合があります。地方厚生局や厚生労働省の最新通知を参照してください。
- 他の処遇改善加算との整理:介護・障害福祉と異なり、医療機関向けのベースアップ評価料は独立した制度ですが、訪問看護ステーションなどを併設している場合は別制度との併存管理が必要です。


↓2026年診療報酬改定の全体像を把握したい方はこちら

資料閲覧はこちら:-診療所・クリニック向け- 診療報酬改定2026 速報まとめ

改定後に見直すべき賃金改善計画のチェックポイント

2026年改定後、最初に行うべき作業は賃金改善計画の更新です。具体的には以下を確認してください。

- 改定後の点数に基づいた月間収益の試算
- 新しい賃金改善率の要件(事務職員等5.7%・その他対象職員3.2%)の確認
- 届出内容の変更が必要かどうかの確認
- 変更届出の提出期限の確認

よくある失敗パターンと回避策:ありがちなNG事例

失敗パターン①:「賃金改善=賞与アップ」と勘違いしていた

事例: 「ベースアップ評価料で入ってきた収益を年2回の賞与に加算した。これで問題ないはず」と思っていたケース。

問題点: 一時金(賞与)のみへの反映は、制度の趣旨である「継続的な賃上げ」に該当しないとみなされる可能性があります。実績報告でこれが発覚すると、過去に遡って算定収益の返還を求められるリスクがあります。

回避策: 賃金改善は必ず毎月の給与明細に反映される形(基本給・固定手当の増額)で実施する。賞与への反映は補完的な位置づけとし、固定的な賃上げを軸に計画する。

失敗パターン②:対象スタッフを一部漏らしていた

事例: 看護師は賃上げしたが、医療事務スタッフとパートスタッフへの反映を忘れていた。また、2026年改定後も40歳未満の勤務医を対象から外していた。

問題点: すべての対象職種・雇用形態(常勤・非常勤)に対して賃金改善を行わなければ、施設基準の要件を満たさない可能性があります。

回避策: 届出前に、クリニック全スタッフ(雇用形態問わず)のリストを作成し、院長(管理者)および40歳以上の医師・歯科医師を除いた全員が改善対象に含まれているか確認する(2026年改定より40歳未満の勤務医・歯科医師も対象に追加)。

失敗パターン③:給与明細の手当名が曖昧で実績報告で説明できなかった

事例: 賃金改善分を「調整手当」として支給していたが、複数の意味で使っていたため、ベースアップ評価料由来の金額がどれだけかを切り分けられなかった。

問題点: 実績報告では改善額を明確に示す必要があります。曖昧な手当名だと、監査・指導の際に説明に苦慮します。

回避策: 「ベースアップ手当」「処遇改善手当」など、目的が明確な手当名を設定し、就業規則に明記する。既存手当の増額として反映する場合も、計算根拠を台帳に記録しておく。

レセコン・電子カルテで管理を効率化する方法

算定管理の課題とシステム活用の重要性

ベースアップ評価料の算定・管理には、以下のような事務的作業が継続的に発生します。

- レセプトへの加算点数の記載漏れチェック
- 月次の算定収益の集計
- 実績報告用データの整理
- 届出状況の確認

これらを手作業で行うと、ミスや漏れのリスクが高まります。レセコンの自動算定機能を活用することで、記載漏れや計算ミスを大幅に減らすことが期待できます。

↓レセコンの自動算定機能について詳しく知りたい方はこちら

資料閲覧はこちら:レセコンの便利機能 自動算定機能とは? メリットや算定できる範囲は?

エムスリーデジカルでのベースアップ評価料管理

クラウド型電子カルテ「エムスリーデジカル」(電子カルテシェアNo.1、m3.com調査2025年1月)は、レセコンが一体型となっているため、算定設定から実績データの確認まで一元管理をサポートします。

主なメリットは以下のとおりです。

- 診療報酬改定への自動対応:改定内容がシステムに反映されるため、点数マスタの手動更新の手間の軽減が期待できます。
- 算定漏れの防止:設定した加算が自動的にレセプトへ反映される仕組みにより、記載漏れリスクの低減に貢献します。
- クラウド上でのデータ管理:算定データがクラウドに蓄積されるため、実績報告用データの集計がしやすくなります。
- 事務スタッフの業務効率化:直感的な操作UIにより、医療事務スタッフの学習コストを抑えることが期待できます。

ベースアップ評価料の管理を含む事務業務全体の効率化を検討している場合は、電子カルテとレセコンの一体型システムへの移行を選択肢に入れてみてください。

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資料閲覧はこちら:多忙な事務長・スタッフの業務をラクにする電子カルテならエムスリーデジカル

エムスリーデジカルは初期費用0円〜、月額11,800円〜(税別)から導入できます。専任スタッフによる導入前サポートから運用後のサポートまで一貫して対応しており、初めて電子カルテを導入するクリニックにも安心です(※一部サポートは有料オプションとなる場合があります)。まずは無料体験から試してみることをおすすめします。

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FAQ:ベースアップ評価料と給与明細に関するよくある疑問

Q1. ベースアップ評価料の収益は、全額をスタッフの賃上げに使わなければならないのですか?

A. 原則として、算定により得た収益に相当する額をスタッフの賃金改善に充てる必要があります。算定収益の全額が賃金改善原資として求められますが、社会保険料の事業主負担増加分については合理的な説明があれば賃金改善原資として計上できる場合があります。詳細は最新の厚生労働省通知や地方厚生局の案内を確認してください。

Q2. 医師の給与はベースアップ評価料で上げられますか?

A. 2026年改定より、40歳未満の勤務医・歯科医師が新たにベースアップ評価料による賃金改善の対象に加わりました。一方、院長(管理者)および40歳以上の医師・歯科医師は引き続き対象外です。院長(管理者)自身への報酬として使うことはできません。対象要件の詳細は最新の施設基準通知を確認してください。

Q3. パートスタッフの時給を上げれば要件を満たしますか?

A. 時給の引き上げも賃金改善として認められます。ただし、時給アップにより月の賃金総額が増えていること、その実績が賃金台帳に記録されていることが必要です。常勤換算での改善率計算も忘れずに行ってください。

Q4. 給与明細に「ベースアップ手当」と明記しなければなりませんか?

A. 必ずしも「ベースアップ手当」という名称である必要はありません。基本給への組み込みや既存手当の増額でも認められます。ただし、実績報告の際に「ベースアップ評価料による賃金改善分はどれか」を明確に説明できるよう、内部の管理記録を整備しておくことが重要です。

Q5. 途中でスタッフが退職した場合、その分の賃金改善はどうなりますか?

A. 退職者への賃金改善は在籍期間分のみが対象となります。実績報告では在籍していた期間の賃金改善額を算入することになります。在籍・退職の記録をしっかり管理しておきましょう。

Q6. 算定収益が賃金改善に必要な金額に足りなかった場合はどうなりますか?

A. ベースアップ評価料による収益が改善計画の目標額に届かなかった場合でも、他の財源を活用して計画に近い水準の賃金改善を行うことが推奨されます。大幅な乖離がある場合は実績報告で説明を求められることがあるため、理由とともに記録しておきましょう。

Q7. 産休・育休中のスタッフも賃金改善の対象に含める必要がありますか?

A. 産休・育休中のスタッフについては、復帰後に適切な賃金改善が反映されるよう計画する必要があります。休業中の扱いについては最新の厚生労働省Q&Aや社会保険労務士にも確認することをおすすめします。

Q8. 実績報告で虚偽の報告をしてしまったらどうなりますか?

A. 虚偽の報告は診療報酬の不正請求とみなされる可能性があり、過去に遡った収益の返還請求や、保険医療機関の指定取り消しといった重大なペナルティにつながりえます。不明な点は必ず事前に確認し、誤りがあった場合は速やかに修正届を提出してください。

Q9. 2026年改定後も同じ届出で算定し続けられますか?

A. 診療報酬改定のタイミングで施設基準が変わる場合、変更届出が必要になるケースがあります。改定後は必ず届出内容の見直しを行い、必要に応じて変更・更新の手続きをしてください。

まとめ:給与明細への正しい反映が経営安定とスタッフ定着の鍵

ベースアップ評価料は、クリニックにとって「スタッフの処遇を改善しながら、診療報酬という形で財源を確保できる」という制度です。しかし、給与明細への反映方法・証明書類の整備・実績報告の管理が適切でなければ、算定要件違反やペナルティリスクを招きます。

重要なポイントを改めて整理します。

- 賃金改善は毎月の給与明細に固定的に反映することが必須
- 手当の名称・就業規則・賃金台帳を一貫して整備する
- 全対象職種・雇用形態(院長・管理者および40歳以上の医師・歯科医師を除く全員。2026年改定より40歳未満の勤務医・歯科医師も対象に追加)を漏れなくカバーする
- 2026年改定後の施設基準変更を確認し、届出内容を更新する
- レセコン・給与計算システムを活用して実績報告に備えたデータ管理を日常化する

スタッフの給与明細に正しくベースアップが反映されることは、スタッフのモチベーション向上・離職防止・人材定着にもつながります。制度を正しく活用して、クリニックの経営基盤を安定させてください。

↓2026年診療報酬改定の生活習慣病管理料など他の改定ポイントも確認したい方はこちら

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