電子カルテとPACS連携の完全ガイド|種類・メリット・選び方まで徹底解説
2026年09月02日 更新日: 2026年10月30日
「PACSって何?」「電子カルテと何が違うの?」という疑問を持つ開業医・医療事務担当者向けに、PACSの基本概念・DICOMの仕組みからオンプレ型とクラウド型の比較、電子カルテとの連携メリット、導入時の選び方のポイントまで解説します。
目次
PACSとは?
PACSとは、「Picture Archiving and Communication System」の略で、画像診断装置のデータを保存・管理・共有する仕組みです。X線(レントゲン)・CT・MRIなどの医用画像を、撮影後すぐにPACSへ送信・保存し、診察室のパソコンからいつでも呼び出せます。院内の複数の診察室で同じ画像を確認できるほか、電子カルテや放射線情報システム(RIS)とも連携できます。
PACSが医療機関に広く普及した背景には、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)という国際標準規格があります。DICOMはメーカーを問わず医用画像データを共通の形式でやり取りできる規格であり、異なるメーカーのX線装置・CT・MRIが混在する環境でも、画像を統一されたシステムで管理・共有できる基盤を提供しています。
1990年代に大規模病院で使われ始めたPACSは、クラウド技術の進化とDICOM対応機器の低価格化によって、現在ではクリニックへの導入も着実に広がっています。整形外科・内科・泌尿器科など、X線撮影を日常的に行う診療科を中心に、小規模なクリニックでも画像のデジタル管理が標準になりつつあります。
PACS導入の3つのメリット
PACSを導入することで期待できる主なメリットは次の3点です。
・即時閲覧・共有
・保管コストの削減
・遠隔診断への対応
1つ目は即時閲覧・共有です。撮影後すぐに診察室のパソコンで画像を呼び出せるため、患者を待たせることなくその場で確認できます。複数の医師が同時に同じ画像を参照できるため、勤務医や非常勤医師が在籍するクリニックでも情報共有がスムーズになります。
2つ目は保管コストの削減です。フィルムの現像費・保管スペース・廃棄コストが不要になります。年間撮影件数が多いクリニックほど積み重なる費用の削減が期待でき、フィルム庫のスペースを他の用途に転用できる点も運営上のメリットです。
3つ目は遠隔診断への対応です。クラウドPACSであれば、インターネット経由で院外からでも画像を参照できるため、往診先での確認や遠隔読影サービスとの連携も実現しやすくなります。放射線科専門医が常駐していない中小クリニックでも、CT・MRI画像の読影レポートを迅速に入手できる体制を整えやすくなります。
PACSの種類を比較する:オンプレ型とクラウド型
クリニックの状況によって、向いているタイプは異なります。
比較項目 | オンプレ型 | クラウド型 |
|---|---|---|
初期費用 | 比較的高くなる傾向 | 比較的抑えやすい傾向 |
運用・保守 | 自院での管理が中心 | 事業者へ委託しやすい |
他施設共有 | 限定的になりやすい | しやすい |
通信の影響 | 左右されにくい | 左右されやすい |
※費用感は導入するシステムやデータ量によって異なります。詳細はメーカーへご確認ください。
厚生労働省が策定する「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(第7.0版〔保守委託機関編〕、令和8年6月)では、人的リソースが限られる小規模な医療機関等では、クラウドサービスの利用や業務委託によって管理を事業者に委ねることが推奨されるとされています。スタッフの少ないクリニックもこの「小規模な医療機関等」に含まれるため、自院でサーバーを保守する体制を整えるより、専門の事業者に運用を任せられるクラウド型を選ぶことで、日々の運用負担を抑えられる可能性があります。
(参考:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版(保守委託機関編)」令和8年6月 )
↓PACSのオンプレ型とクラウド型の違いを詳しく知りたい方はこちらの資料もご覧ください

資料閲覧はこちら:PACSとは?オンプレとクラウドの違いについても解説
クリニックがPACSを選ぶ際の3つのチェックポイント
PACSの種類は多く、クリニックの診療科目・スタッフ体制・既存機器の構成によって最適な選択肢は異なります。導入前に以下の3点を確認しておくことで、後から「連携できなかった」「運用が大変すぎた」といったトラブルを防ぎやすくなります。
①電子カルテ・RISとの連携実績を確認する
PACSを導入しても、使用中の電子カルテや放射線情報システム(RIS)と連携できなければ、医師が別システムを行き来しなければならず業務効率の改善効果が限定的になります。検討するPACSが、自院の電子カルテと連携実績を持つかどうかを事前に確認することが重要です。連携の深さも製品によって異なり、「患者IDが紐付くだけ」のものから「電子カルテの画面から直接画像ビューアが起動する」ものまで幅があるため、実際の操作フローをデモ等で確かめるとよいでしょう。
②運用体制に合わせてオンプレ型かクラウド型かを選ぶ
オンプレ型はサーバーの保守を自院または委託業者が担う必要があり、障害時の対応体制が求められます。クラウド型は事業者に運用を委ねやすく、厚生労働省の医療情報システム安全管理ガイドラインでも小規模医療機関におけるクラウド活用の取り扱いが整理されています。スタッフが少なく院内ITリソースが限られるクリニックでは、クラウド型が運用負担を抑えやすい選択肢となります。
③DICOMの対応状況と既存機器との互換性を確認する
現在使用中のX線装置・CT・MRI等がDICOM規格に対応しているかを確認することが必要です。対応していない機器がある場合は、変換装置(DICOMゲートウェイ)の追加費用が発生することがあります。また、既存データの移行・バックアップ体制についても確認しておくと、長期運用時のリスクを低減できます。
PACSと電子カルテの違い
電子カルテとPACSは、しばしば混同されますが、管理する情報の種類と役割が根本的に異なります。
電子カルテ(EMR/EHR)は、患者の基本情報・診療録・処方・検査オーダー・病名・請求情報など「テキストベースの診療情報」を管理するシステムです。一方、PACSは「画像データ」に特化したシステムであり、X線・CT・MRIなどの大容量デジタル画像を専門に扱います。
イメージとしては、電子カルテが「患者ファイルの棚」であり、PACSが「レントゲン画像の保管庫」です。それぞれ単独でも機能しますが、この2つが連携することで、診察中に電子カルテの画面から直接患者の画像を呼び出せるようになり、診療の流れが大きく変わります。
電子カルテとPACS連携で得られる5つのメリット
1. 診察室から画像にすぐアクセスできる
最も直接的なメリットは、診察の流れを止めずに患者の画像を確認できる点です。電子カルテとPACSが連携していない場合、医師は画像を見るために別の端末を操作したり、読影室に移動したりする必要がありました。連携が実現すると、電子カルテの患者画面から直接該当患者のX線・CT・MRI画像をワンクリックで呼び出せます。
外来診療中の「この患者さんの前回のCTを見せてほしい」という場面を想像してください。電子カルテ画面からそのまま画像が開けば、患者への説明もスムーズになり、1件あたりの診察時間短縮への貢献も期待できます。
↓スタッフの業務負担軽減や効率的なクリニック運営に関心がある方はこちらの資料もご覧ください。

資料閲覧はこちら:多忙な事務長・スタッフの業務をラクにする電子カルテならエムスリーデジカル
2. フィルム・物理保管コストの削減
フィルム現像コスト、現像液・定着液の消耗品費、フィルム保管庫の設置スペース、廃棄時の産業廃棄物処理費など、従来の写真フィルム管理にはさまざまなコストが発生していました。PACSを導入することで、これらのランニングコストの削減が期待できます。
特に整形外科や内科でX線撮影件数が多いクリニックでは、フィルム関連コストの累積が大きく、PACS導入による費用削減効果が現れる傾向があります。
↓医療機器やシステムの導入・調達におけるコストについてお悩みの方はこちらの資料もご覧ください。

資料閲覧はこちら:(リース・購入・レンタル)医療機器システム調達方法 比較ガイド
3. 院内での情報共有がリアルタイムに
PACSと電子カルテが連携すると、画像データと診療録が紐付いて管理されます。医師・看護師・検査技師・医療事務それぞれが、権限の範囲内で必要な情報を同時に参照できるため、院内コミュニケーションのロスが減少します。
複数の医師が在籍するクリニックでは、担当医が不在でも他の医師がすぐに画像を確認して対応できるため、患者対応の質の底上げに貢献します。
4. 院外・在宅からの遠隔アクセスが可能に
クラウドPACSを採用した場合、インターネット接続環境があれば院外からでも画像の閲覧が可能です。往診先や自宅からタブレット・スマートフォンで患者の画像を確認したり、専門医との連携(遠隔読影)に活用したりする使い方が実現します。
遠隔読影サービスと組み合わせると、放射線専門医が常駐していない中小クリニックでも、CT・MRI画像の読影レポートを迅速に入手できるようになります。これは診断精度の向上と医師の業務負荷軽減に貢献します。
↓往診や訪問診療でのシステム活用について詳しく知りたい方はこちらの資料もご覧ください。

資料閲覧はこちら:訪問診療/往診時に最適な電子カルテの選び方
5. 法令に沿った長期保管と監査対応の容易化
医療機関が医用画像を保管しなければならない期間については、診療録の法定保管年数である診療完結の日から5年(保険医療機関及び保険医療担当規則第9条)に準じた運用が一般的です。フィルム時代は劣化・紛失リスクがありましたが、デジタルデータとしてPACSに保管すれば、劣化なく確実に長期保存できます。
さらに、電子カルテと連携することで「いつ・誰が・どの画像を参照したか」というアクセスログの管理も一元化でき、医療情報セキュリティや個人情報保護の観点から要求される監査対応もスムーズになります。
エムスリーデジカルのPACS連携対応
クラウド電子カルテシェアNo.1(m3.com調査2026年3月)のエムスリーデジカルは、90以上のサービス・機器と連携実績があります。PACS連携の一部例は以下の通りです。
メーカー | 機械名 |
|---|---|
富士フイルム | C@RNACORE |
コニカミノルタジャパン | Unitea |
Canon | RapideyeCore |
ViewSend ICT | ViewSend RAD Viewer |
エムネス | LOOKREC |
(上記は連携実績の一部例です)
エムスリーデジカルは「圧倒的な使いやすさ」と「導入しやすい低価格」を一貫して追求し、累計1万件超のクリニックに採用されています。
初期費用は0円〜、月額費用は11,800円〜(税別、ORCA連動型)から始められるため、開業初期の投資を抑えながらPACS連携を含む本格的な電子化を実現できます。導入を検討されている方には、まず無料体験でその使いやすさをご確認いただくことをお勧めします。
↓エムスリーデジカルの連携機能やさらに詳しい料金体系についてはこちらの資料をご覧ください。

資料閲覧はこちら:エムスリーデジカル詳細資料
PACSに関するよくある質問(FAQ)
Q. PACSだけでなく、RIS(放射線情報システム)も必要ですか?
RIS(Radiology Information System)は、放射線科での患者管理・撮影予約・読影レポート管理を行うシステムです。大規模病院では放射線科の業務を効率化するために必須とされることが多いですが、外来中心のクリニックでは放射線科専任スタッフがいないケースも多く、RISが必須とはなりません。クリニックの場合、PACSと電子カルテを連携させることで、オーダー管理から画像確認・カルテ記録までの一連の流れを電子カルテ上で完結させることが可能です。RISが必要かどうかは院内の放射線業務の規模や読影レポート管理の必要性によって異なるため、PACSベンダーや電子カルテベンダーに相談して判断することを推奨します。
Q. クリニックへのPACS導入にかかる費用の目安は?
PACSの導入費用はシステムの種類・規模・連携する機器の数によって大きく異なります。オンプレ型は初期費用としてサーバー機器代・ソフトウェアライセンス費・設置工事費が必要となり、規模によっては数百万円規模になるケースもあります。一方、クラウド型は初期費用を抑えやすく、月額サブスクリプション方式で提供されることが多いため、開業初期のクリニックでも比較的導入しやすい傾向があります。導入検討の際は、初期費用だけでなく、保守・サポート費・ストレージ追加費用・電子カルテとの連携設定費用も含めた総コストで比較することを推奨します。
※費用はメーカー・システム構成によって大きく異なります。あくまで一般的な目安としてご参照いただき、詳細は各ベンダーへお問い合わせください。
Q. PACSの画像データはどのくらいの期間保管する必要がありますか?
診療録(カルテ)の法定保管年数である診療完結の日から5年(保険医療機関及び保険医療担当規則第9条)に準じた運用が一般的です。ただし、整形外科などでは患者が長期にわたり経過画像を参照するケースもあり、実務上は5年を超えて保管することも少なくありません。クラウドPACSであれば物理的なサーバー容量を意識せず長期保管しやすいメリットがあります。なお、保管期間の方針は院内規程として明示することが望ましく、厚生労働省のガイドラインや日本医師会のガイダンスも適宜参照してください。
Q. 既存のX線装置はそのままPACSに接続できますか?
接続できるかどうかは、既存のX線装置がDICOM規格に対応しているかどうかによります。2000年代以降に導入された多くの装置はDICOM対応ですが、古い機器の場合は非対応のものもあります。非対応の場合は、アナログ画像をデジタル変換するCR(Computed Radiography)システムやDICOMゲートウェイの追加が必要となり、費用が発生します。導入前に使用中の機器のメーカー・型番をPACSベンダーに伝え、接続可否と追加費用の有無を確認することを推奨します。
まとめ
PACSと電子カルテを組み合わせることで、日々の運用がしやすくなる可能性があります。特にクラウド型を検討されている場合は、電子カルテとの連携のしやすさも合わせて考えることが、システム選びの大きなポイントになります。
参照元
- 厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版(保守委託機関編)令和8年6月:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000516275_00006.html
- 厚生労働省|保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和32年厚生省令第15号)第9条:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84035000&dataType=0&pageNo=1
- 厚生労働省|医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)第20条:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80092000&dataType=0&pageNo=3







