【2026年診療報酬改定】新設「電子的診療情報連携体制整備加算」とは?点数や要件、賃上げ対応を徹底解説
2026年02月20日 更新日: 2026年06月03日
【2026年6月施行】診療報酬改定の答申内容を速報解説。新設される「電子的診療情報連携体制整備加算」の算定要件(加算1〜3)や、「外来・在宅物価対応料」の創設、拡充された「ベースアップ評価料」の具体点数など、クリニック経営に直結する変更点と対策をまとめました。
目次
2026年2月、中央社会保険医療協議会から「令和8年度 診療報酬改定」の答申内容が発表されました。今回の改定では、人手不足を解消するための「スタッフの給与アップ」と、電気代や材料費の値上がりを支える「物価高への対応」が大きなテーマとなっています。さらに、医療のデジタル化(医療DX)など、これからの時代に合わせた新しいルールも追加されました。
本記事では、診療所・クリニックの皆様の日々の診療に関係が深い「重要なポイント」に絞って、具体的な点数や対応策をご紹介するとともに、新設加算を取りこぼさないための具体的なロードマップやシステム選定のポイントまで徹底解説します。
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資料閲覧はこちら:-診療所・クリニック向け- 診療報酬改定2026 速報まとめ
1. 初再診料の引き上げと「物価高騰への対応」
近年の急速なインフレや光熱費・医療材料費の高騰は、クリニックの経営を強く圧迫しています。今回の改定では、物価高騰による物件費の増加や、今後の物価上昇への段階的な対応として、点数が引き上げ・新設されました。
1-1. 初再診料のベースアップと新設加算の全容
- 初診料:291点(現行点数から変更なし)
- 再診料:76点(現行75点から1点アップ)
さらに、令和8年度及び令和9年度の物価上昇に段階的に対応するため、基本診療料等の算定に併せて算定可能な加算として「外来・在宅物価対応料」が新設されます。
- 初診時:2点
- 再診時等:2点
- 訪問診療時:3点
1-2. クリニック経営へのインパクトとシミュレーション
たった数点のアップと思われるかもしれませんが、年間の延べ患者数に換算すると大きな経営インパクトを持ちます。 例えば、1日あたり平均40人の再診患者が訪れるクリニック(月間診療日数20日)の場合、再診料の1点アップと外来・在宅物価対応料の2点(合計3点=30円)の増収効果は以下のようになります。
- 1日あたり:40人 × 30円 = 1,200円
- 1ヶ月あたり:1,200円 × 20日 = 24,000円
- 年間:24,000円 × 12ヶ月 = 288,000円
この増収分は、後述する賃上げの原資や、高騰する電気代などの経費補填に直結するため、レセコンでの自動算定設定が漏れなく行われているかを確実にチェックすることが重要です。
2. 医療従事者の賃上げ(ベースアップ)評価
看護職員、医療事務等の幅広い職員の処遇改善を目的とした加算が拡充されました。
- 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ):初診時17点、再診時等4点
- 継続して賃上げに係る取組を実施している場合に適用される「継続的賃上げ実施時の特例」が設定されており、初診時23点、再診時等6点となります。
また、(Ⅰ)の算定額だけでは賃上げ必要額の50%に満たない小規模施設向けに「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が用意されています。区分1〜24まで設定されており、医療機関ごとの「賃金改善に必要な総額」に合わせて選ぶ仕組みになっています。
↓これからのクリニック経営を取り巻く環境や、他院の動向について詳しく知りたい方はこちらの資料もご覧ください。

資料閲覧はこちら:開業前に知っておきたい開業医の実態 2025年最新 アンケート調査
3. 医療DX推進:新設「電子的診療情報連携体制整備加算」
これまでの医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算を廃止し、「電子的診療情報連携体制整備加算」が新設されます。
初診時の評価は以下の3つの区分が設定されています。
- 加算1(15点):電子処方箋の発行体制および電子カルテ情報共有サービスの活用実績があり、マイナ保険証利用・Webサイト公表等のDX体制が整っていること。
- 加算2(9点):電子処方箋の発行体制(または導入予定:導入に向けた手続き中など)があり、マイナ保険証利用・Webサイト公表等のDX体制が整っていること。
- 加算3(4点):マイナ保険証の利用体制(オンライン資格確認)が整っており、Webサイトでの情報公表等の標準的なDX体制を有していること。
また、再診時についても、初診時の加算1〜3のいずれかの届け出を行っている場合に、月1回に限り「2点」が算定可能になります。
【補足解説:算定の壁となる「マイナ利用率」】
いくら高額なシステムを導入していても、各区分の要件に共通してのしかかる「マイナ保険証の利用率基準(30%以上など)」をクリアしなければ加算は一切算定できません。患者への声掛けやツールを使った事前周知など、運用面での仕組みづくりが評価の絶対条件となっています。
↓電子的診療情報連携体制整備加算について、こちらの資料でも詳しく解説しています。

資料閲覧はこちら:電子的診療情報連携体制整備加算とは(旧医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算)点数・算定条件を解説
4. 新設加算を算定するための具体的なロードマップ・手順
制度が大きく変わる中、クリニックが確実に「電子的診療情報連携体制整備加算」を算定開始するための具体的な手順を4つのステップで徹底解説します。
【ステップ1:現状のシステム確認とベンダーへの問い合わせ】
まずは、現在利用している電子カルテ・レセコンのシステムベンダーに対し、「電子処方箋」および「CLINS(電子カルテ情報共有サービス)」への対応状況と改修費用、スケジュールを確認します。加算1を狙う場合、ベンダー側のAPI連携対応が遅れていると、自院の努力だけではどうにもならないため、早期の状況把握と、場合によってはシステムのリプレイス(乗り換え)検討が必要です。
【ステップ2:マイナ利用率向上に向けた院内オペレーションの構築】
最大のハードルである「利用率の壁」を越えるため、受付スタッフのトークスクリプトを「保険証はお持ちですか?」から「マイナ保険証はお持ちですか?」へと徹底して変更します。同時に、待合室へのポスター掲示や、Web予約システムを通じた事前の利用推奨アナウンスなど、患者が自然にマイナ保険証を提示するフローを構築します。
【ステップ3:院内掲示物とWebサイトの必須更新】
施設基準として「医療DXを通じた質の高い医療の提供に取り組んでいる旨」や「取得した診療情報を活用している旨」の掲示・公表が義務付けられています。院内の見やすい場所に掲示物を貼り出すとともに、自院のホームページ(お知らせ欄など)に必ず文言を追記してください。
【ステップ4:地方厚生局への「再届出」の実施】
最も見落としがちなのがこのステップです。旧「医療DX推進体制整備加算」を算定していたクリニックであっても、要件と名称が変わるため、2026年6月の算定開始に向けて、定められた期日までに新しい様式で管轄の地方厚生局へ「再届出」を行う必要があります。これを忘れると算定ができなくなります。
↓電子処方箋の導入に向けて具体的な手続きを知りたい方はこちらの資料もご覧ください。
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資料閲覧はこちら:【電子処方箋の始めかた】 必要な手続き3ステップ
5. かかりつけ医機能・疾病管理の評価見直し
質の高い慢性疾患管理や、地域連携を強化するための見直しが行われました。
機能強化加算(80点)の要件変更
- 災害等の発生時に診療を継続し、早期の業務再開を図るための「BCP(業務継続計画)」の策定が必須となりました。
- 28日以上の長期投薬やリフィル処方箋の交付が可能であることを、院内の見やすい場所に掲示することが必須となりました。
生活習慣病管理料の事務負担軽減と質向上
- 療養計画書の作成において、患者から署名を得ることが不要(廃止)となり、事務負担が軽減されます。
- 管理料(Ⅰ)において、血液検査を少なくとも6ヶ月に1回以上実施することが要件化されました。
- 糖尿病患者の合併症予防を推進するため、「眼科/歯科医療機関連携強化加算(各60点)」が新設されました。
新設「特定機能病院等紹介患者受入加算」
- 特定機能病院や地域医療支援病院等からの紹介状を持って受診した際の初診時に1回限り、「60点」が算定できる加算が新設されました。
時間外対応体制加算への名称変更と点数アップ
- 従来の「時間外対応加算」から名称が変更され、夜間・休日の対応力を強化するため、加算1が7点、加算2が5点、加算3が4点、加算4が2点へと各区分の点数がアップしました。
6. オンライン診療の新たな評価
オンライン診療の適切な実施に関する指針の改訂を踏まえ、質の向上と適正化が行われます。
- 遠隔電子処方箋活用加算(新設・10点):オンライン診療時に電子処方箋を発行し、電子処方箋管理サービスを通じて重複投薬チェック等の情報を実際に活用して診療を行うことで、月1回算定できます。
- 訪問看護遠隔診療補助料(新設・265点):医師がオンライン診療を行う際、訪問看護師が患者の自宅等に同行し、バイタル測定などの補助をリアルタイムで行うこと(D to P with N)が評価されます。
7. 診療報酬改定におけるクリニックの失敗例・成功事例
制度が複雑化し「実績」が厳しく問われる中、システム選びや運用対応を誤ると大きな損失を招きます。ここでは現場で起こり得る具体的なシミュレーションを解説します。
【失敗例:ベンダー任せで期限を過ぎ、数百万円の逸失利益に】
- 状況: Aクリニックの院長は「うちは比較的新しいオンプレミス(据え置き型)電子カルテだから、自動的に加算1を取れるだろう」と思い込み、ベンダーからの案内を待っていました。
- 結果: 実際にはベンダー側でのCLINS連携に多額の追加改修費用と数ヶ月の開発期間が必要であることが直前に判明。結果的に地方厚生局への届出期限に間に合わず、長期間にわたり加算1(15点)を算定できない事態に。月間500人の初診患者がいる場合、毎月7万5千円、年間で約90万円以上の逸失利益が発生してしまいました。
【失敗例:マイナ利用率が「29%」で基準未達に】
- 状況: システム要件はすべて満たし、加算1の届出も完了したCクリニック。しかし、高齢患者が多いことを理由に、受付での声掛けをスタッフ任せにして徹底していませんでした。
- 結果: 月末の集計でマイナ保険証の利用実績がわずか29%にとどまりました。たった1%の不足で施設基準を満たしていないとみなされ、翌月以降の算定に影響が出る(または過誤調整の対象となる)という手痛い失敗を招きました。
【成功事例:予約システム連動でマイナ利用率と業務効率を劇的改善】
- 状況: Bクリニックは、クラウド電子カルテの導入と同時に「デジスマ診療」のような事前問診・アプリ連携型のシステムをセットで導入しました。
- 結果: アプリ上で事前の問診や保険証確認を行う過程で、マイナポータル連携やマイナ保険証利用のメリットが患者に自動でアナウンスされる仕組みを構築。スタッフが無理に声掛けせずとも、来院時には患者が自然とカードリーダーに向かうフローが完成し、利用率は余裕で50%を突破。無理なく加算1の施設基準をクリアし、安定した収益基盤を確保しました。
8. 電子的診療情報連携体制整備加算に備えるためのシステム選定チェックリスト
診療報酬改定は2年ごとに必ず実施され、そのたびに医療DXに対する要求は高度化していきます。都度、システムの改修費用を払ったり、ベンダーの対応遅れに悩まされたりしていては経営が安定しません。これから電子カルテの導入やリプレイスを検討する場合、以下のチェックポイントを必ず確認してください。
- クラウド型システムであるか?
- 法改正や点数改定の際、院内のサーバーを買い替えることなく、自動かつ無償(または低コスト)でシステムが最新状態にアップデートされるクラウド型であることがこれからの絶対条件です。
- 電子処方箋・CLINSへのAPI連携に標準対応しているか?
- 国が推進する規格(HL7 FHIRなど)にいち早く準拠できる、高い開発力とスピード感を持つベンダーを選びましょう。
- レセコン(ORCA等)との連動がシームレスか?
- カルテに入力した内容が即座にレセコン側に反映され、算定要件を満たした際に加算コードが自動で付与される仕組みがあるかを確認します。これにより算定漏れのリスクを大幅に軽減できます。
- 患者向けの予約・問診・決済機能と一体化できるか?
- マイナ利用率の向上や、スタッフの業務負担軽減(ベースアップ対策・残業削減)を実現するには、電子カルテ単体ではなく、患者と接点を持つ周辺ツール(アプリ等)とのシームレスな連携が不可欠です。
9. 26年6月に施行スタート。新制度下でクリニックが取り組むべきこと
2026年6月より、診療報酬改定に基づく新制度が本格的にスタートしました。すでに準備を始めているクリニックも、これから体制を整えるクリニックも、今後の安定経営に向けて、直近数ヶ月間で以下のポイントを確実に押さえておく必要があります。
- 新設「電子的診療情報連携体制整備加算」の運用定着とシステム投資:
- 新設される加算で最大15点(加算1)の高評価を得るには、単なるシステム導入ではなく、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの「活用実績」が求められます
- 施行後も要件は厳格にチェックされるため、マイナ保険証利用率の維持・向上など、日々の診療でデジタル連携の実績を積み重ねることが必須です
- まだ体制が整っていない場合は、要件の複雑化にも自動でアップデート対応できるクラウド電子カルテ等へ早急にシステム投資を行い、収益基盤の強化を急ぎましょう
- 「機能強化加算」の算定維持と「かかりつけ医機能報告制度」への対応:
- 地域の「かかりつけ医」としての役割がより一層重視される改定となっています。機能強化加算(80点)を算定し続けるためには、新たに必須化されたBCP(業務継続計画)の策定や、28日以上の長期投薬・リフィル処方箋に対応する体制表示が必要です
- 本格化する「かかりつけ医機能報告制度」への対応も見据え、地域連携における自院の強みを明確にし、要件を漏れなく満たす体制づくりを進めましょう
- 新たな評価を見据えた「オンライン診療」の強化
- 今回の改定では、オンライン診療の「質」が新たに評価されます
- オンライン診療時に電子処方箋を活用した場合の評価(遠隔電子処方箋活用加算)や、訪問看護師が患者の自宅等でサポートする形(D to P with N)への補助料などが新設されました
- 患者さんの利便性向上や他院との差別化のためにも、電子カルテや予約システムと連動した「オンライン診療」の導入・活用を強化していくことが今後の成長の鍵となります
↓新加算の要件となる「電子カルテ情報共有サービス」にも深く関わる、国が推進する「標準型電子カルテ」の最新動向やメーカー製との違いについては、こちらの資料で詳しく解説しています。

資料閲覧はこちら:標準型電子カルテとは? 概要/システムイメージ/現状の動き/メーカー製との違いなどをご紹介!
10. よくある質問(FAQ)と専門用語の解説
制度の詳細について、クリニックから寄せられるよくある疑問と、押さえておくべき専門用語を解説します。
FAQ
11.まとめ
2026年診療報酬改定は、物価高への直接的評価と、医療DXの本格運用をクリニックに強く促す内容となっています。 複雑化する施設基準や新設された「電子的診療情報連携体制整備加算」に対応し、加算を確実に取りこぼさないためには、制度変更に自動で対応できるシステムの活用が不可欠です。
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