【2025年版】電子カルテ導入で利用できる補助金とは?条件・手順、電子カルテ導入が義務化される背景も解説
2025年10月2日
政府が2030年までの電子カルテ普及率100%を目指す中、多くの医療機関にとって「いつ導入するか」「費用はどうするか」は喫緊の課題です。特に初期費用は、電子カルテ導入への大きなハードルとなるでしょう。
本記事では、クリニックや病院が電子カルテ導入時に活用できる「IT導入補助金」や、東京都の独自支援策、さらに国策として推進される「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」といった主要な制度を、2025年最新情報に基づいて徹底解説します。
目次
電子カルテは義務化される?
近年、「電子カルテの義務化」という言葉を耳にする機会が増えています。これは、政府が目指す「医療DX」推進の一環であり、単に業務効率化のためだけでなく、日本の医療全体をより良くするための重要な取り組みです。
現時点で電子カルテ導入は義務化されていませんが、政府は「医療DX令和ビジョン2030」に基づき、「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」方針を掲げています。
また、医療機関や薬局で患者の情報共有ができる「電子カルテ情報共有サービス」についても、本年2月よりモデル事業が実施されており、今後ますます電子カルテの導入は推進されていくと考えられます。
本記事では、電子カルテを導入する際に活用できる代表的な補助金制度を分かりやすくご紹介します。
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IT導入補助金
IT導入補助金の概要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に活用できる国の補助金制度です。対象事業者には医療機関も含まれます。
電子カルテもこの制度の対象となることが多く、導入費用の負担を大きく軽減することができます。
IT導入補助金の補助額
IT導入補助金の補助額は、申請する枠やツールの種類によって異なります。
IT導入補助金のスケジュール
IT導入補助金には、申請期間が複数回設けられています。具体的な期間については申請枠や募集期間によって異なりますが、例として、通常枠の5次締切分のスケジュールは以下になります。
- 締切日:2025年9月22日(月)17:00
- 交付決定日:2025年10月31日(金)(予定)
- 事業実施期間:交付決定~2026年4月30日(木)17:00(予定)
- 事業実績報告期限:2026年4月30日(木)17:00(予定)
詳細はIT導入補助金2025 WEBページよりご確認ください。
IT導入補助金の採択率
IT導入補助金の採択率は、公募回や申請する枠によって変動します。 現時点で公開されている2025年3次締切分までの採択率は以下となります。
通常枠
- 1次締切分 通常枠:50.7%
- 2次締切分 通常枠:41.2%
- 3次締切分 通常枠:30.4%
インボイス枠(インボイス対応類型)
- 1次締切分 インボイス枠(インボイス対応類型):57.6%
- 2次締切分 インボイス枠(インボイス対応類型):47.2%
- 3次締切分 インボイス枠(インボイス対応類型):40.5%
セキュリティ対策推進枠
- 1次締切分 セキュリティ対策推進枠:100.0%
- 2次締切分 セキュリティ対策推進枠:54.3%
- 3次締切分 セキュリティ対策推進枠:41.3%
複数社連携IT導入枠
- 1次締切分 複数社連携IT導入枠:100.0%
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金の申請は以下のステップで行います。
-
事業内容理解・各種登録
- 公式サイトを読み補助事業について理解する
- 「GビズIDプライム」の取得
- 「SECURITY ACTION」宣言の実施
- デジ with「IT 戦略ナビ with」の実施(任意)
- 各種必要書類の手配 ※法人・個人事業主で必要な書類が異なります。
- ITツールの選択 ※申請前にツールを決定します。
-
交付申請・審査・決定
-
ITツールの発注・契約・支払い
-
事業実績報告
-
補助金額の確認・承認
-
事業実施効果報告
IT導入補助金の注意点
新規開業時は原則ご利用いただけません
IT導入補助金は交付申請時において、事業を国内で運営していることが要件となっており、申請には下記書類が必要なため、新規開業時はご利用いただけない場合が多いです。
- (法人)履歴事項全部証明書/(個人事業主)確定申告書
- ※法人の分院開業など、申請可能なケースもあります
申請は補助を確約するものではありません
IT導入補助金は交付申請後、審査を経て交付決定がなされます。申請後必ず補助が受けられるとは限りません。 また、IT導入補助金について詳細をまとめた資料を無料でお配りしておりますので、お気軽にご覧ください。
資料ダウンロードはこちら: 医師のための診療システム導入ガイド「IT導入補助金 2025」- 概要と活用のポイント -
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金の概要
東京都保健医療局の政策として、【診療所診療情報デジタル推進事業補助金】が実施されていました。 (※2025年度の補助金の申請の提出期限は、令和7年8月29日(金)で締め切られました。)
この補助金は、電子カルテシステムの診療所への導入を支援することにより、地域における診療情報の共有、連携を促進することを目的として2025年に開設されました。
現在、申請は終了しております(※)が、今後の参考のため、どのような補助金であったか記載します。
(※)次回開催予定などは公式HPをご覧ください。 東京都保健医療局
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金額
補助金額は、選定額の3/4です。選定額は、対象経費の支出予定額と、東京都が定める基準額を比較して小さい方が適用されます。
| 施設種別 | 都補助金の基準額 |
|---|---|
| 5床以上の有床診療所 | 60万5千円 × 病床数 |
| 4床以下の診療所(無床診療所を含む) | 300万円 |
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金の対象者
補助対象となるのは、東京都内において医科診療所を開設する者で、東京都知事が適当と認める方です。新規で有床診療所や無床診療所を開設する方も含まれます。
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金の対象となる経費
電子カルテ導入にかかる幅広い経費が対象となります。
電子カルテシステムの導入に関する経費
- 電子カルテシステムとは、診療録等を電子的に記録、保存及び管理するためのシステム。
- サーバー等機器導入、システム設計・開発、情報セキュリティ対策、取付工事等を含む。
医療情報システムを電子カルテと連携させる際の改修経費
- 医療情報システムとは、オーダリングシステム、医事会計システム等、病院内における医療情報の管理に係るシステム。
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金受給のためのその他の条件
本補助金を受給するためには、以下の地域医療連携への協力や継続的な取り組みが求められます。
医療ネットワークへの参加義務
電子カルテシステムの導入後、医療機関等における地域医療ネットワーク、又は公益社団法人東京都医師会の東京都全域を対象とした医療連携ネットワークである「東京総合医療ネットワーク」に、閲覧施設として参加すること。
国策への協力
国が構築を進めている電子カルテ情報共有サービスの導入に向けた取組を進めること。
導入後の効果検証への協力
事業の効果検証のため、補助金の交付年度から5年間、構築した電子カルテシステムの実績、効果、課題等に係る調査を提出するなど、都に協力すること。
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金のスケジュール
申請から補助金受給までの大まかな流れは、以下のステップで進行します。
- 申請書類の準備
- 審査
- 交付決定
- 実績報告書の提出
- 額の確定
- 請求・支払
東京都 診療所診療情報デジタル推進事業補助金の次回開催について
現在は【診療所診療情報デジタル推進事業補助金】の申請は締め切られております。 現時点で次回開催は未定となっておりますが、より詳細な情報やお問い合わせについて知りたい方は 東京都保健医療局のホームページをご覧ください。
また、電子カルテ導入時に使える補助金をまとめた資料を無料でお配りしておりますので、お気軽にご覧ください。
資料ダウンロードはこちら:【補助金情報最新版】電子カルテに使える補助金まとめ
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金の概要
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金は、政府が進める「全国医療情報プラットフォーム」構築の核となる「電子カルテ情報共有サービス」を医療機関が導入する際にかかる費用の一部を支援する制度です。この制度は、主に20床以上の中小規模病院から大規模病院を対象としており、病床規模に応じた補助上限額が設定されています。
このサービスを通じて、「3文書6情報」を全国の医療機関や薬局間で共有できるようになります。
【補助の対象となる主な経費】
補助の対象になる項目は以下です。
電子カルテ情報共有サービスに接続することを前提とし、
- 6情報および各文書を、FHIRに基づいた形式に変換し、医療機関システム(※)と電子カルテ情報共有サービス間で電子的に送受信する機能を、電子カルテシステム等に導入する際にかかる費用。(システム改修費用、システム適用作業等費用(SE費用、ネットワーク整備等)など) ※医療機関に導入されているシステム(電子カルテシステム、レセプトコンピュータ/医事会計システム、文書作成システム、地域連携システム、検査システム、健診システム等)の総称。
- (健診部門システム導入済の医療機関の場合)健康部門システムと電子カルテシステムの連携費用。
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金の補助額
補助額は、医療機関の規模と健診部門システムの実施有無によって異なります。
【健診実施機関の場合(健診部門システム導入済の医療機関)】
| 大規模病院(200床以上) | 中小規模病院(199~20床) | |
|---|---|---|
| 交付上限額 | 6,579,000円 | 5,457,000円 |
| 補助割合 | 事業額の13,158,000円を上限に1/2を補助 | 事業額の10,913,000円を上限に1/2を補助 |
【健診未実施医療機関の場合(健診部門システム未導入の医療機関)】
| 大規模病院(200床以上) | 中小規模病院(199~20床) | |
|---|---|---|
| 交付上限額 | 5,081,000円 | 4,085,000円 |
| 補助割合 | 事業額の10,162,000円を上限に1/2を補助 | 事業額の8,170,000円を上限に1/2を補助 |
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金のスケジュール
本補助金には、電子カルテ情報共有サービスの導入締切と、補助金の申請締切がそれぞれ設けられています。
- 電子カルテ情報共有サービスの導入完了締切:令和13年3月31日
- 補助金申請締切:令和13年9月30日
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金の申請方法
電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金の申請は以下のステップで行います。
- 電子カルテ情報共有サービスを利用できるシステムの環境整備の完了
- システムベンダ等へ費用を精算
- システムベンダ等から領収書及び領収書内訳を受け取る
- 必要な書類を添付して補助金を申請
その他詳細につきましては、社会保険診療報酬支払基金 国民健康保険中央会 「電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金」のページをご確認ください。
電子カルテシェアNo.1 エムスリーデジカルのご紹介
エムスリーデジカルは、医療情報サイト「m3.com」を運営するエムスリーグループが提供するクラウド型電子カルテです。
IT導入補助金2025の対象となっている本電子カルテは、高い操作性と豊富な機能、最新のAI技術を活用した業務効率化機能が特徴で、クリニックからの支持を集めています。
エムスリーデジカルの主な特徴
- AIによる業務支援:
患者ごと、医師ごとのよく使用するオーダーを学習しリストに表示するなど、AIを活用した機能が充実しています。これにより、診察時間の短縮や医療の質の向上に貢献します。 - 直感的な操作性:
洗練されたUI/UXで、電子カルテの操作に不慣れな方でもスムーズに導入・利用できます。タブレットでの手書き入力にも対応し、医師の負担を軽減します。 - 「デジスマ診療」とのスムーズな連携:
WEB予約・WEB問診・自動受付・キャッシュレス決済・お知らせ配信・オンライン診療の機能などがオールインワンになった「デジスマ診療」と連携し、患者さんの予約から診察、会計までを効率化。受付業務の負担を軽減し、患者満足度向上にも繋がります。 - 充実した周辺システム連携:
オンライン診療システム、Web予約システム、Web問診システム、検査システムなど、クリニック運営に必要な様々なシステムとの連携が可能です。 - 強固なセキュリティ体制:
医療情報を扱うため、厳重なセキュリティ対策が施されています。データはクラウド上で管理され、災害時のリスクも低減されます。 - レセコン一体型: レセプトコンピュータが標準で搭載されており、レセプト作成業務を効率化します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 初期費用 | 0円~ |
| 月額費用 | 11,800円~(ORCA連動型)、24,800円~(レセコン一体型)※いずれも税別 |
| 運営会社 | エムスリーデジカル株式会社 |
| HPのURL | https://digikar.m3.com/ |
| クラウド型orオンプレミス型orハイブリッド型 | クラウド型 |
| AI機能 | AI自動学習機能 |
| 導入サポート | 専任スタッフによる導入前コンサルティングから導入後のサポートまで手厚い支援 |
| 周辺システムとの連携・拡張性 | 充実した周辺システム連携 |
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まとめ
電子カルテの導入を支援する各種補助金制度は、初期費用の負担を大きく軽減してくれる強い味方です。国が2030年までの普及率100%を目指す背景もあり、今後も新たな支援策が登場する可能性があります。
補助金を活用する上では、以下の2点を意識いただくと良いでしょう。
- 最新情報の確認と計画的な申請:
補助金の情報(対象期間、補助率、申請要件)は随時更新されます。ご検討の際は、必ず各制度の公式ホームページを再度チェックし、最新の情報を基に計画を立ててください。また、補助金によっては申請施設すべてに適用されるわけではないことや、開催期間が限られている点にも注意が必要です。 - 補助金ありきでの判断は避ける:
補助金は導入時の金銭的な負担を軽くしてくれますが、活用することに意識が向きすぎると、導入が遅れるというデメリットが生じる可能性があります。導入が遅れると、紙カルテからの移行負担が増大したり、医療DXの波に乗り遅れるリスクも高まります。
補助金を賢く利用し、導入のハードルを下げつつも、クリニックの長期的な成長に繋がる最適な一歩を踏み出しましょう。






参考:
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